万葉集 海の底

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万葉集 海の底

曲 シオンは物見らが歌うのを聞く(guitar.ver) 作曲 ヨハン・セバスティアン・バッハ
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真珠『たまの』『うろくづ』魚 「奥を深めて 海の底」
し んじゅたーまーのーうーろ くづさ かな おきをーふーかーめーて わたの そこ


海の底のように 心の奥底深く『しのふ』
う み のそここころのおくーふかいそこでふかくしのーう

ひそかにしたう 「あがおもへる」
ひ そ かーにしたーう あがー おーもえる


私が思っている あの方に 「君にはあはむ」
わたしがーおもーっているあのかたにきみにはあわん

時がたっても『年をへぬとも』年月がたっても
ときがたってもとーしーをーへぬともねんーげーつがたっても

今回は奈良時代に成立したといわれている、『万葉集』巻四・六七六首を基に創作しています。

『万葉集』 巻四・六七六
海の底 奥を深めて 我がおもへる 君にはあはむ 年をへぬとも
訳 海の底、心の深く、奥深く 私が思っている あの方にお逢いしたい 年月がたっても

※「君にはあはむ」は、あの方に「お会いしたい」、「お会いできよう」など、助動詞
「む」の意味で、さまざまな訳になるため、「あはむ」を歌詞のなかでは、訳をしていません。

・たま(玉・珠)→球の形や、それに近い形をした、美しいものの総称。宝石 真珠
 まだま しらたま 美しい石 美しい物や、貴重な物のたとえ
 上代では、たま(霊)の象徴として用いたり、呪術的な要素を伴うこともあったそうです。
 また、美しいもの、優れているものをほめていうさいに、「玉の」の形など名詞の上に
 付けて接頭語的に用いることもあるそうです(例、玉葛(たまかずら)・玉裳(たまも)など)

・うろくづ→魚類 「うお(魚)」の異称 水の中にすむ動物 「うろこ(鱗)」をもつものの総称
 うろこ。「いを」「いろくづ」とも。
・いろくづ→うろこ 魚類。 「いろこ(鱗)」と同根で、「くづ」は屑の意、「いろ」は
 ざらざらした小粒のことという説があり、もともと「うろこ」の意であったそうです。
 また、鎌倉時代から、「うろくづ」の形が現れ始め、中世以降はおもに「魚類」の意で
 用いられ、「いろこ」と使い分けられたそうです。 ・いを→うお。さかな

・おき(奥)→「沖」に同じ。「辺」の対。「奥」に通じ、海・川・湖の陸地から遠い所、
 また、遠く隔たった場所、目に見えない場所などを表し、時間的な意味では例がないそうです。

・おきを深めて→「沖は深いので」の意から、もしくは「沖を深くして」の意で、
 奥を一層深くして、心の奥底深く、心の底から、の意。

・わた→「海(うみ)」の古語。(後世「わだ」とも)
 語源として、動詞「わた(渡)る」は、「わた」を活用した語という説や、
 逆に、船で渡るところから「わた」の意味ができていった、という説などがあるそうです。

・わたの底→「わだのそこ」とも。海の底。「オキ」の枕詞という説があるそうです。

・しのぶ(偲・慕・賞)→ひそかに思い慕う 慕う 遠くのもの、昔のものなどを思う
 思いだし懐かしく思う 賞美する 恋慕う 古くは「しのふ」。
 上代では「しのふ」と「ふ」が清音でしたが、奈良末期には濁音化が始まり、
 中古になると意味の類似性から「偲ぶ」と「忍ぶ」がしだいに混同され、
 ともに「しのぶ」の形で用いられるようになっていった、という説があるそうです。

・あ(吾・我)→自称代名詞。わたくし わたし われ わ あれ

・ふる(古る・旧る)→「経」に通ずる語。
 年月が経過する 年月を経る 古くなる 年をとる 老いる 時とともに薄れていく

参考文献

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